霞が関で残業を禁止するために必要なのは

  さて先日、塩崎恭久厚生労働大臣が「省内で22時以降の残業を禁止する方針」であると報じられた。恒常的な残業が常態化している霞が関において、大変素晴らしい取組みである。

  ところで、大学時代の友人が山ほど霞が関に勤めているので私はいろいろ話を聞いている。私としては、私が友人から聞いて理解したこと程度はせめて塩崎大臣が「分かって」言っていることを願うのだが、霞が関では仕事は外から来る。「経済財政諮問会議」やら「対外交渉(特にアメリカ等からの圧力)」やらいろいろあるそうだが、外の最たる例は国会である。残業量はほとんど国会次第だと言っても過言ではない。

  つまり、国会から作業依頼やら質問通告やらがバンバン来ている中、単に残業を禁じても、役人に両立不可能・二律背反な義務を課しただけという結果に終わるわけだ。それでは誰が見たって意味がない。残業を禁止するのであれば、必要なのは「(ある程度以上の)国会からの仕事を拒否すること」である。役人が自発的に国会の仕事を拒否すれば角が立つ(というより、いろいろと面倒な問題が生じて気の毒な)ので、大臣が責任を持って拒否する・拒否のルールを定めるのだ。仮に問題になれば大臣自身が国会に対して責任を負う。端的に言えば、大臣が国会で次のように答弁するわけである、「このルールに反した作業依頼でしたので、期限は私の判断で延長させていただきました」「質問通告が遅かったので、今日ではなく明日、私から答弁します」と

  塩崎大臣の「残業禁止」がここまで意味している場合に限りそれは実現可能であり、そこまで考えていなかった場合は何の意味もないお題目に過ぎなくなる。さて、どちらであろうか。見ものである。

  もっとも、東洋経済に「民主党政権は、政策立案から決定まで霞が関に頼り切りにもかかわらず、凋落する支持率回復手段としての「官僚バッシング」を相も変わらず続けている」(東洋経済2012年5月26日号・横田由美子「キャリア官僚たちの素顔」)とまで書かれた民主党時代とは違うので、個人的には期待できるだろうとみている。