増税以外の選択肢ってないと思うんですけど・・・

  2014年12月の衆議院選挙において、私は「予定どおり消費税を10%に増税」と公約に掲げる政党に投票したいところだが、そもそもそのような政党が1つもない。一番ましな自民党公明党でさえ、2017年4月まで増税を先送りする予定である。これは単に「政党が悪い」なのではなく、・国民がそう望んでいる、・それを各政党が汲み取っている、に過ぎない。

  増税は誰でも嫌なものだが、選択肢は「税金が高い方がいいですか、安い方がいいですか」というものではないのだ。「税金は安い方がありがたいですね」「では安くしましょう」という話ではまったくない。

  選んでいるのは、「今、増税を受け入れるのがいいか、時期は確定できないがかなり近い将来(10年以内)のハイパーインフレがいいか」ということである。増税というのは財政規律のため、ひいてはハイパーインフレを防ぐために必要なものだからだ。そして国民は、一貫して「ハイパーインフレがよい」と答えているわけである。

  ここが私にはよくわからない。ハイパーインフレになったら、ペイオフなどは夢物語、あなた方の銀行預金の大半は差し押さえられる(預金封鎖が行われる)。その中で、スーパーで玉ねぎやにんじん1袋を買うのに1万円では足りなくなる。どうして国民が、いくらかの消費税よりそのような生活がましだと考えるのか、難しすぎて私にはわからない。

  「増税せずにただちに16,8兆円を捻出します」などと主張していた詐欺政党に与党の座を与えた2009年の衆議院選挙をきれいさっぱり忘れたわけではないだろうから、「無駄をなくせば財政問題は解決する」と考えている日本国民はよもやいないだろう。一方で社会保障を削ることに賛成する声も聞いたことがない。そして増税には反対。なぜなら景気がよくならないから。

  ……改めて再度考えてみたのだが、残念ながら論理必然的に「ハイパーインフレがいいんですね」ということにしかならない。(まあ多くの国民の声は、「自分以外(例えば大企業とか富裕層)だけに対して増税すればよい」ということだろうが、一般に、そんな虫のいい話がないのは小学校で学ぶことである。)

  国民が望む以上、早晩、ハイパーインフレは実現するだろう。国民生活は徹底的に破壊される。日本が世界に誇る治安の良さなども失われていくだろう。(そこまでの社会不安があり、かつ公務員の給料が止まっている中であっても、治安が良いままだと私としては信じたいところだが、そう信じる方法が見当たらない。)私としてお願いしたいことは、その際、誰かスケープゴート(たとえば財務省の官僚だとか、政治家だとか)を見つけて血祭りに上げるのだけはやめてほしいということである。財務省なんかは、もはや「悠久の昔」から財政規律について必死に警告している(財政制度等審議会の提言などを見れば一目瞭然。怒りに満ちた文章である)。それを「財務省の省益だ」と切り捨ててきたのは他でもない国民である。ハイパーインフレは、国民の責任においてなされた、国民の選択の結果だというのが客観的な事実である。その責任を一部の人間に押し付けるのはフェアではない。(まあ私は、「財務省の省益」という意味がそもそもわかりませんけどね。)

 

  様々な記録が残っているドイツ(第1次対戦直後)のように、「買い物に行く時に札束を積むための手押し車が飛ぶように売れた」「札束を入れた鞄を盗まれた際、札束は重くて邪魔なだけなので捨てられ、鞄だけを持っていかれた」という生活より、15%とか20%とかの消費税を苦労して払う生活の方が、だいぶましだとは思わないですかねえ。

 

  なお、これには留保があり、現在日銀が狙っている「金利を上げることなくインフレを引き起こし、国債を実質的に圧縮する」という、ほとんど想像を絶する離れ業が成功しない場合の議論である。これが成功すれば幸いにしてハイパーインフレにはならない。日銀がこのようなことを狙っているとわかった時には心底驚愕したものだ。このような手立ては、私の頭の端をよぎったことすらなかった。まさに「離れ業」としか形容のしようがない。

  ただ、いかに離れ業であれ、成功の見込みは極めて薄い、危険な賭けだと思いますよ。まあ、日銀が破綻した上で起きるハイパーインフレより、日銀存続の下でのハイパーインフレの方がましなのか、私にはもはやわからない。ハイパーインフレ下でどんなことが起きるのか、正確に予測することがそもそも難しいからだ。